登録年月日:1952.11.22
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新薬師寺は、東大寺の「奈良の大仏」を造立された聖武天皇の病気平癒を祈願し、お后の光明皇后によって1300年前に創建されたお寺です。 見どころは、すべての病を治すといわれる「薬師如来」と、その周りを円陣に取り巻いて薬師如来を守護している最古にして最大の「十二神将立」です。 何れも創建当時から残る本堂内でご覧いただけますので、是非奈良にお越しいただき間近で鑑賞してください。 新薬師寺公式サイト
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解説
新薬師寺は、聖武天皇の病気平癒を祈願し西暦747年に創建されました。聖武天皇は「奈良の大仏(東大寺銅造盧舎那仏坐像)」を造立された天皇ですが、大仏造立の途中で体調を崩されます。そこで天皇の病気を治すための法要が各地で行われ、これをきっかけにお后の光明皇后によって当地に新薬師寺が造営されました。751年には新薬師寺で聖武天皇のための続命法要が行われ、奈良の大仏は無事完成しました。 創建当初の新薬師寺は、約440メートル四方の寺地に金堂や東西両塔など七堂伽藍が建ち並ぶ大寺院でしたが、780年の落雷、962年の台風で、多くの堂宇が焼失・倒壊してしまい、13世紀頃までに現在の伽藍として復興されます。現在の本堂は、雷・台風の被害を逃れ8世紀の創建当初から残る数少ない貴重な建造物として、国宝に指定されています。本堂内には、やはり国宝である約1300年前の薬師如来坐像、十二神将立像が安置されています。
木造薬師如来坐像は、体の病、心の病などすべての病を治す霊薬の入った薬壺(やっこ)を左手に持ち、病気を治す仏として信仰されている新薬師寺の本尊で、9世紀初期ごろの制作とされています。
頭から胴体は一本のカヤの木から彫り出され、木芯部分が使われているため、元の木は胴体の幅の2~3倍の直径を持つ巨木と考えられています。樹齢1000年以上の木とされ、造られて約1100年の仏像は木の誕生から2000年以上を経て今ここにあるといえます。
仏像の背後で仏身から発する光を表現した「光背」は、シルクロード由来の植物アカンサスが大きな葉を翻らせ花を咲かせながら上に伸びる西洋的な意匠で作成されており、花の上の六躯の小仏は本尊と併せて聖武天皇の病気平癒を祈願し創建当時にまつられていた七躯の仏「七仏薬師」を表しています。
穏やかで力強く、圧倒的なボリューム感のある姿は、我が国屈指の仏像彫刻とされ、国宝に指定されています。
薬師如来は、修行時代に人々を救いたいという思いから十二の誓いを立てます。この十二の誓願がそれぞれ神格化したのが「十二神将」です。一躯で7千、合計8万4千の部下を持つ大将で、薬師如来の眷属として十二の方角を守っています。
十二神将立像は8世紀に制作された、最古にして最大の十二神将像で、塑像彫刻の傑作として国宝に指定されています。塑像とは、木の骨組みに縄を巻きそこに藁をまぜた粘土をつけて大まかな形を造り、紙と雲母をまぜた土で上塗りしたもので、眼球は着色されたガラスの吹き玉で表現されています。表面には鮮やかで立体的な彩色が施され、現在でも部分的に当時の色が残っています。
それぞれが独創的で躍動感あふれる十二神将像のなかでも、髪を逆立て怒りを露わに立つ「伐折羅大将」は、切手の図案になるなど特に人気があります。
薬師如来坐像を中心に十二躯もの国宝を、非常に近くで見ることのできる社寺は他に無いといえます。